赤谷プロジェクトのチームで奥会津へ、桐の苗木をもらいに行ってきた。 この地で取れる会津桐は良質な桐材として有名で、生育環境としても奥利根と奥会津は非常に似通っているらしい。 桐は、杉やヒノキなどと比較して成長速度が極端に早い木材だ。一年目で3-4m前後まで成長する個体が多い。 もはや植物に近い気がする。 しかし町役場の担当者から聞いた話では、成長速度の速さは、 幹の伸長がある程度固まるまでの2-3年の間に密度濃く手間をかける必要があることの裏返しであるようだった。 芽が出たら木質化が始まる前に取り除くこと、残したい芽は動物に食べられないように対策したり。。。。 また、早い成長を支えるための豊富な栄養(肥料)が必要で、栄養が欠乏していると病気にさらされやすい樹だそうだ。 色々話を伺って、木を育てる文化が根付いているのを感じた。
林業(刈り取り)の対象というより、野菜や畜産のような生育の対象として森が存在する。 暑い日も寒い日も、木の都合に合わせて手間をかけなくてはならない。 それが出来る背景には、箪笥という最終的な結果(製品)に対するリスクとリターンを背負い続けてきた、 地域の歴史があるのかもしれない。でも他に、取りうる選択肢なんてあったのだろうか? 色んな稼ぎ方の選択肢がある世の中というのは、 個人や集団が向き合う面倒なリスクは外部化され、代わりにリターンは画一化していく気がする。 何かと向き合うことをやめれば、そこから得られるものも限られてくる。 大体みんな同じようなリスクを捨て、結果として同じようなリターンを得る。 品質向上のための木の生育に手間をかけるのはやめて、 バラツキのリスクは代わりに薬剤や加熱処理や接着材等、 木以外の要素によって処理しよう。 そこで生み出される箪笥はおそらく、 日本全国どこで作ってもあまり大差ない仕上がりとなる。 だからこそ「差別化のためのデザイン」や、 食いつきやすい話題性やストーリーが大切になってくるのだろうか。 そして差別化や広報戦略と向き合っているうちに、 木の生育と向き合う本来の能力が地域から損なわれていく。 リスクテイキングが致命傷のレッテルを貼られるようになる。 (「気長に人を育ててペイするビジネスモデルなのか!?」) 問題は今の世の中が、 過去にないほどリスクを手放しやすい点にあるかもしれない。 奥会津のこの町と、そこで育つ会津桐は、 良い時代も、悪い時代も当然経験したと思う。 桐箪笥の国内市場は過去が良い時代で、今は悪い時代の部類に入るかもしれない。 でも土地の記憶が詰まった桐の生育を放棄するという選択肢は当分ありえないだろう。 それはいろんな稼ぎ方の選択肢を持ってしまった個人や集団には決して選択できない、 土と歴史の匂いがする道のように思える。 Comments are closed.
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March 2019
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