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Eagle's Nest「イヌワシのすみか」

6/8/2018

 
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株式会社 ラッシュジャパンさまから「みなかみの材で棚を作ってくれないか」というオーダーを頂き、世界に一つだけ(二台ですが)の棚をデザイン。
​現地で建前をするという稀有な棚になりました。
図面を書いてる時から、「これはエライ棚が出来よるぞ。。。。」とワクワクしながら作りました。
折角なのでそれらしい名前をつけようと思い、「Eagle's Nest(イヌワシのすみか)」と命名。
なんでネスト(巣)なんだ?どんな棚になったんだ?

今回は色々と想い(重い)があるので読むの疲れる系の堅苦しい文章になるかもしれませんがすいません。
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はい、こちら、我が家の裏庭の杉ですね。2012年に伐ったものを4年寝かせ、16年に製材しました。Eagle's nestでは棚板の一部で使ってあります。
こんな感じで、ネストの木材は全て丸太の状態から面倒みてきた木たちです。
ヒバ、ヒメコマツ、トチ、桂、クロベ、杉。。。
杉以外は20年ほど寝かせた木材たちです。
ダイジェストで超個人的な振り返りをしてみたいと思います!

製材二度目

丸太で買った後、すでに木材は板状にしてあるので、二度目の製材からスタート。
特に奥利根のヒバは、尾根沿いの猛烈な風や豪雪といった厳しい環境に耐え続けるために、
とてもイビツな木に成長してしまうので、一回曳いて、力を開放してやります。で、反ったりねじれたり。。。。全然つかえない( ;∀;)部分も出ます。 ま、苦労を忘れる綺麗さなんですが。
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ベッドにもなりそうなヒメコの一枚板
ヒメコマツの一枚板。製材機に乗せてこれから切るところです。なんと罰当たりな、細かく切るなんて、と思ってしまいます?
しかしこの板には木の中心部分(芯)が含まれているため、今後、中心部分に割れが入ること間違いなし、なのです。よって一枚ものでは使えません。
我が家では普段は、芯の部分は取り除いた上で両端でテーブルの脚を作ったりしますが、
今回はネストの柱になってもらいました。う~む適材適所。
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製材の割り付けをしてるところです。
いきなりですがネストの全体的な部材寸法はこの時点でほぼ決まりました。
何言ってるかというと、この一枚板を、芯以外全部無駄にせず等分して使うぞ、と。それがネストの柱の寸法になりました。
柱の寸法が決まると自動的に梁などの横つなぎ材の寸法も決まり、それがネストの全体的なプロポーションを導き出しています。
今振り返ってああ~そうだなと思いますが、つまり、この板でなければあのデザインにはなりませんでした。デザインファーストではなくあくまでも自然ファースト。勿体無いだけですが。
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1950年頃作られた製材機を現役で使ってます
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製材機の音を聞くと「いよいよ始まるぞ」と思います。僕の中では甲子園のサイレンと同じです。
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柱が取れました。
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製材後、上梁を更に細かく加工しているところです。ヒバかな?
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最後の写真は、設置直前に撮影された柱。完成形です。板から随分変わりました。

​製材が終わると、今度は接合部の加工です。

継手、仕口の加工

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赤と黒で何か書いてあるの分かりますか?
これは「墨付け」と呼ばれる工程で、木と木の接合する部分の加工方法が示してあります。
墨の位置を間違えたらパーです。ゾクゾクしますね。
で、僕からすると狂気としか思えないのですが、親父はこの墨付け作業をパース絵と寸法だけ分かれば出来てしまうという特殊能力を備えていました。初めて知りました。色々描いたけど図面いらねーじゃん。
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情報、これだけ。
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こんな感じで書いておけば、、、
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ノミと玄翁とノコだけあれば、、、
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ジャパニーズトラディション、金輪継ぎ(かなわつぎ)が出来ます。
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ヒメコの土台部分を刻んでいるところです。これもパースだけで一発で加工できるとか、息子が言うのも変ですが異常だと思います。金輪継ぎなら家作りで毎回やってるから分かりますが、この組み方は今回のためだけのオリジナルなので、ますます訳が分かりません。
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仕事も暮らしも含め、
自然の中で生きてて感じることですが、
自然に育った素材をなるべく無駄なく無理なく使おうと思うと
​細部のデザインは複雑化します。
伝統の継手である金輪継ぎの断面はなぜあんな複雑な3D形状になったのか?と言えば、
木のねじれ、あばれという本来の特性を否定せず、受け入れて使うためです。
この写真の、ヒメコの土台部分も同じ。
あの一枚板をネストの柱として使うために、
柱同士をつなぐためのデザインが複雑な形状になりました。


加工は大変ではありますが、
樹齢200~300年かけて育った木なので、
木で組んでやれば経年劣化の心配なく、同じくらい永く使え、
​時代を超えて愛されるモノになると思っています。

ちょっと脱線してしまいますが。。。。
木で組む伝統建築では作ることと、こわすことが同じ技術でつながっています。
その本質は、ゴミを生み出さないこと。
​リユースを前提とした技術(理念)だと思っています。
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組み立ての際にはキッチンの皆さんに手伝ってもらいました。
キッチン(LUSHさんでは製造工房をキッチンと呼びます)ではネストの建前を、スタッフの方にも手伝って頂きました。
込み栓と呼ばれる木の棒を打ち込んで、柱と梁を留めるところです。
玄翁(げんのう)を使って栓を打ちますが、外すときも反対側から打ってやれば外れます。
これは、作る技術とこわす技術が表裏一体である分かりやすい例です。
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ただこの技術は、ハンドメイド、手仕事でなければ成立しません。
​今の日本の住宅産業ではほぼ全て、木材は工場で機械によって加工されていますが、
それらは金属の接合部品の使用を前提としています。


たしかに、経済的な合理性で考えれば、パッと切ってダダダっと釘や金属プレートで固定する方が正解かもしれません。完成した見た目では恐らく殆ど変わらないと思います。
でもそれら工業製品は、奥利根の木材と同じ世紀をまたぐ時間の深さに耐えてくれません。最初から持たないと分かっているものを作るということは、作り手としてどうなんだろう、

建築物や棚としての役目を終えたとき、この木をゴミにするしか選択肢が無かったとしたら、個人的には悲しいです。色味もどんどん深い色になっていくので。木が寿命を迎えるまで、リユースして使い、修繕して使い、そして最後は地球に分解してもらい、自然に還す。まるで本物の鳥のネスト=巣のように。

​そんなことを大切に考えると、必然的に木組みで家や家具を作るという選択になり、現在に至ります。
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奥利根ヒバ

ヒバ板です。棚板用に結構な量を使いました。
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倉庫から出してきたところ
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寸法を揃えるために張り合わせます
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見向きもされませんが、磨けば光る子です
奥利根のヒバ。記憶の曖昧な頃から家にあったので、
20年位は我が家で保管されてただろうか?
木のクセが強くジャジャ馬なため、
​棚には使えない、端材となってしまう部分も結構出ました。
結構な借金背負いこんでまで買い集めたモノなのに、
よくそこの判断に関してはクールに決断出来るなと、
​息子ながら職人としての意地とか品性というものを今回も学ばせてもらいました。
​

ま、勿体無くは見えるんですが、元々が青森ヒバのような有名なものじゃありません。
水上の山奥で生えている、樹齢250年ほどですが認知度はゼロなヒバです。
​実はチップになって燃やされるか、
使うとしても線路の枕木くらいにしか使われない運命のヒバでした。
だから勿体無いって借金してまで買い集めた訳ですね!


でもそうやって燃やされて一生を終えるハズだったモノに、
住まいや、家具としての姿を与え、命を吹き込むこと。それ自体がやりがいだし、
職人冥利だし、自然の中で生かされる存在として取るべきチョイスだという考えのもと、
​これまで奥利根ヒバの家を建て続けてきたよう
に思えます。
​
奥利根ヒバの森はその後、保護林に指定されました。もう二度と伐採されることはありません。親父はその時の気持ちを「やっと解放された」と言います。もう買わなくていいんだ、無駄にされる心配はなくなるんだ、と。

チップになるか、人との交わりの断絶か、という両極端な選択肢しか与えられてこなかったというのは、可哀想な気もします。
青森ヒバのようなブランド化を経て奥利根ヒバに陽の目が当たることは、
ついにありませんでした。おそらくウチに貯めてあるだけだし。
そういう意味で、「貴重な財産」というよりはむしろ、みなかみの人と森の、
​関わり合いの遺産といった方が近いかもしれません。

ネストの棚板は一部だけ裏庭の杉を使ってますが、それ以外は全て奥利根ヒバです。
棚板で使ったのは初めてです。育った環境の厳しさをみじんも感じさせない
ヒバの優しい色味が、きっと陳列商品の色を引き立ててくれるかと思って使いました。
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兄貴分のタケルさんが一枚ずつ丁寧にカンナをかけて仕上げてくれました。

ブランドロゴも変えてます。

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ブランドロゴで"Fresh handmade cosmetics"と書かれている部分を "Empoer nature with Akaya Project"と変え、更にイヌワシの絵とメッセージも追加した看板を作成しました。(そもそもLUSHさんとの出会いが赤谷プロジェクトで水上へいらっしゃったことに始まります)
模様の強い板は栃の木で、おとなしいのが奥利根ヒバです。
栃の木は根元のこぶの部分を使ったため、半端ないテカリと力強い模様が走っています。
対比するようにヒバは優しい無節の部分を使いました。

Empower natureつまり、自ら声を上げることの出来ない自然に対して、赤谷プロジェクトを通して、我々プロジェクトに賛同する人々がその声になっていこう、代弁していこうみたいな意味が込められています。


完成は目の前で。

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建前はスタッフの方々に見守られる中でした。
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金輪継ぎを組むところ
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大きい方のネスト。人が3人くらい寝れます。
柱は全てヒメコマツ。つなぎに入っているのは奥利根ヒバで、一段飛ばしでホゾ穴を貫通させ、デザインの一部としてます。ホゾには地元のミズメザクラ材でくさびを作って差し込んであり色のアクセントになっています。これは以前のブログでも書いた、日本自然保護協会さま向けの椅子で使ったアイディア。
梁は桂とクロベを金輪継ぎで。継手を留める角の込み栓はあえて長めに残し、手前と後ろの梁で継手の向きを90度ずらしたデザインとしました。
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主張してくる金輪継ぎ。
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大きいネストは全体の形も各セクションの形も、正方形で揃えました。
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小さいネストも幅160cmあります
背面板のデザインは正方形の連続で日本的な模様をあしらいました。
大きいネストは外形ごと正方形を重ねてわりとかしこまった感じに。
小さいネストは少しだけ崩してみました。
並べると模様が左右対称になります。
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ヒバの手触り、におい楽しんでもらえたかな
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母親の話が長くなかったかすごく心配です
みなかみ町には、日本でも貴重な猛禽類イヌワシが生息しています。
今回のこのEagle's Nestを通して、森のことを知り、脚を運んでもらうきっかけになれば、それはおそらく間接的には本物のイヌワシの巣を作る(守る)こと=森を守ることにつながっているのではないか。そんなことを考えました。
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巣作りです。
写真提供: ラッシュジャパン

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